2018年5月20日 (日)

【国際税務】平成30年度税制改正~PE定義の変更など~

今日は平成30年度税制改正のうち、国際税務に関連する部分を確認したいと思います。
今回お伝えするのは次の二つのテーマです。

1、PE定義の改正

2、タックスヘブン対策税制の改正


以下、順番に内容を説明します。

1、PE定義の改正

(1)代理人PEの改正

その範囲に、国内において非居住者又は外国法人のために、その事業に関し反復して契約を締結し、又は一定の契約の締結のために反復して主要な役割を果たす者で、これらの契約が非居住者等の資産の所有権の移転等に関する契約である場合における当該者を加えるとともに、独立代理人の範囲から、専ら又は主として一又は二以上の自己と密接に関連する者に代わって行動する者を除外する。(斜字体は財務省HPからの抜粋、以下同じ)


非居住者の為に「資産の所有権の移転等に関する契約」を締結する者が代理人PEに含まれるようになったのがポイントです。
例えば外国法人が日本法人に日本顧客への販売を委託している場合、当該日本法人が代理人PEとして認定される可能性があります。


(2)支店PEの改正

保管、展示、引渡しその他の特定の活動を行うことのみを目的として使用する事業を行う一定の場所等は、PEに含まれないものとする。ただし、その活動が非居住者等の事業の遂行にとって準備的又は補助的な機能を有するものである場合に限る。

従前から保管等のための場所等は支店PEに含まれなかったのですが、その保管等の場所は「事業にとって準備的又は補助的な場合に限る」ようになったのがポイントです。
日本に倉庫があるだけだから、という理由で課税出来ないことが問題になったケースは記憶に新しいと思いますが、今後は課税範囲が広がると認識する必要があります。


(3)建設PEの改正
建設PEの期間要件について、契約を分割して建設工事等の期間を1年以下とすることにより建設PEを構成しないことがその契約の分割の主たる目的の一つであった場合には、分割された期間を合計して判定を行うこととする。

契約が「分割さている」と判断されれば分割が無かったものとして期間を再計算、その結果その期間が1年超となれば建設PEになることが明示されたのがポイントです。
どこまでを一つの建設工事と考えるのか、しっかり判断が必要だと言えます。


2、タックスヘイブン対策税制の改正

(1)一定の株式譲渡益の取り扱いを適用対象額(加算対象額)から除外

特定外国関係会社又は対象外国関係会社が、外国関係会社に該当することとなった外国法人の統合に関する基本方針及び統合に伴う組織再編の実施方法等を記載した計画書に基づいて、一定の期間内に、その有する対象株式等を当該特定外国関係会社等に係る内国法人又は他の外国関係会社に譲渡をした場合において、その譲渡の日から2年以内に当該譲渡をした特定外国関係会社等の解散が見込まれること等の要件を満たすときは、その対象株式等の譲渡による利益の額を、当該譲渡をした特定外国関係会社等の適用対象金額の計算上控除することとする。

国際的組織再編を実施した結果、ペーパーカンパニー等を保有することになり、そのペーパーカンパニーが保有する他のグループ会社株式を譲渡し益が計上されるとき、その益はタックスヘイブン対策税制での加算対象外となる改正です。
国際的M&Aが活発になる中、過度な税負担を負わせないことで国際的事業再編を促すことが目的だと思われます。


(2)無税国の税負担割合の考え方

無税国に所在する外国関係会社の租税負担割合は、その外国関係会社に係る各事業年度の租税の額の所得の金額に対する割合とする。この場合において、その外国関係会社が受ける配当等の額があるときは、その配当等の額はその所得の金額から減算することとし、その所得の金額がないとき又は欠損の金額となるときは、その外国関係会社に係る租税負担割合は零とする。

無税国についてその税負担割合が零となる旨、明示されました。


(3)部分合算課税制度における部分適用対象金額
部分合算課税の対象としないこととされる関連者等に対する金銭の貸付けに係る利子について、その関連者等の範囲から個人を除外する。

個人に対する貸付は部分合算課税対象から除外できなくなりました。


以上です。


今までの法律で手が行き届いていなかった部分をより補正したイメージではないでしょうか。
今後も引き続き改正が予定されていますので、長期的な意思決定には国際税務の流れをご理解いただくことが重要だと思います。


高田和俊


2018年4月20日 (金)

【国際税務】ミャンマー会計年度変更へ〜4月→10月スタートへ〜

日本からの進出先として注目されているミャンマー。
ミャンマーの政府会計年度は日本と同じく4月〜3月だったのですが、2018年度から10月〜9月に変更となります。

ミャンマーの法人は会計年度に合わせて三月決算でしたが、この改正により一般法人会計年度がどのように変わるのか注目されます(税金計算は三月締めのままと日経新聞にはあります)。

気になったのでJETROでミャンマー法人税制を確認してみました。
下記要約します。


法人税率:25%

事業年度:4月〜3月

税務申告期限:6/30まで(三ヶ月以内)

納税期限:申告書提出後、課税通知書が送達され、そこに納期限表示

課税範囲:ミャンマー法人は全世界所得課税(MIC認可企業は国内源泉課税)、外国法人は国内源泉課税

繰越欠損金:三年繰越可能(繰戻還付無し)

非居住者に対する源泉税:
・利子→15%
・配当→0%
・ロイヤルティ→15%
・商品購入、サービス提供、賃貸借→2.5%

源泉税納期限:支払から7日以内

日本との租税条約:無し(2018.4現在)

特筆すべきは非居住者が商品購入した際に源泉税が発生することです!

ただ実務的には源泉徴収されていないケースが多いようです。後で国からミャンマー法人が追徴を受け、日本企業に請求される可能性もゼロではありませんので、適時に正しい知識を持った上で実務に当たることが肝要だと思います。

あすか税理士法人
高田和俊


2018年4月18日 (水)

【国際税務】ソフトバンク追徴課税〜国際的M&Aリスク〜

ソフトバンクグループが東京国税局の税務調査を受け、939億円の申告漏れを指摘されたとのことです。(2018年4月18日、日経新聞より)


ソフトバンクグループは2013年にスプリント(米携帯電話大手)、2014年にブライトスター(米携帯卸売大手)を買収したことは当時大きくニュースで取り上げられていました。

その買収先の子会社等の中にタックスヘイブン国、つまり税金が低い軽課税国の法人が含まれており、かつペーパーカンパニーと認定を受けて、タックスヘイブン対策税制により追徴課税を受けることとなったようです。


ペーパーカンパニー認定は、独立企業としての体をなしているか、グループ以外との取引は活発か、どこの国でも出来る事業を敢えて税金が安い国で営んでいないか等を総合的に勘案して判断されます。


今回のケースは、既に修正申告と追徴納税を済ませ、再発防止策を講じたとソフトバンクグループの広報室からコメントが出ていることを鑑みると、ペーパーカンパニー認定について国と争わないのではないかと思われます。



国際的M&Aが活発になる中で、買収時に十二分な税務デューデリジェンスを実施することが事実上困難である中で、タックスヘイブン対策税制の影響を財務経理部署が適時に(税務申告までに)必要な情報を把握するのは非常に困難なのだと思います。


今回のケースも買収先が抱えていた子会社等は数百社あったそうです。タックスヘイブン対策税制は毎年子会社の状況を把握しておく必要があるため、注意が必要です。


また2018年4月1日以降開始事業年度(外国関係会社事業年度ベース)より新しいタックスヘイブン対策税制がスタートしますが、トリガー税率廃止により税負担20%以上の国も加算対象となるため、国際的M&Aを実施するときは今まで以上に注意が必要ですね。



あすか税理士法人
高田 和俊

2018年4月 2日 (月)

新年度。飛躍を目指し初心を忘れずに〜新しい仲間が二人加わりました〜

新年度がスタートしましたね。

新年度は気持ちが切り替わるタイミングなので私は好きです。


この時期は新社会人の方、新しく大学・高校に進学する方を電車でよく見かけます。
もちろんご本人に話しかける訳ではないですが、何故か雰囲気的に伝わりますよね。


不安と緊張がありつつも、新しいことが始まるワクワク感や希望が滲み出ているように感じます。
見聞きした全てを吸収できそうな初々しさが素敵だと思います。


私も初心を忘れず真摯に仕事に打ち込み、よりレベルの高い、クライアントが真に求めるサービスを提供出来るよう、努力を怠らないようにしたいと改めて思いました。


あすか税理士では、今日から二人の新しい仲間が加わります。

あまたある会計事務所から、私たちの会計事務所を選んで下さったことを誇りに思ってもらえるよう、また成長が実感できるような教育に励み、税理士業界で働く楽しさを伝えたいと思います。

事務所に御電話いただくと新しいスタッフが対応するかもしれません。
温かく見守っていただけましたら嬉しい限りでございます。

新しい出会いに感謝です。



あすか税理士法人
高田和俊

2018年1月22日 (月)

【国際税務】タックスヘイブン対策税制の改正(2018年4月1日より)

2018年税制改正大綱が公開され、内容が気になるところだと思います。

ですが、1年前の改正内容を覚えておられますでしょうか?

国際税務の分野では2017年の税制改正で「タックスヘイブン税制」について大きな改正が入っています。

いわゆるトリガー税率(20%)が廃止されましたよね。
あの改正が実効を持つのが、外国関係会社の2018年4月1日以後開始事業年度からとなります。
つまり間もなく、です。

今日は、この4月以降から実効となる新タックスヘイブン税制(2017年度税制改正)について少しおさらいしてみましょう。

このおさらいをするにあたり、2017年12月21日付の租税特別措置法通達改正の内容は非常に重要ですので下記URLを参照してください。実務的には是非押さえておきたい内容となっております。
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/hojin/kaisei/171221/index.htm


■トリガー税率の廃止

改正前はトリガー税率(税負担割合)が20%以上であれば、実質的なペーパーカンパニーであってもタックスヘイブン対策税制の対象外となり、日本で合算して申告する必要がありませんでした。
また20%未満でも「適用除外基準」を全て満たしていれば基本的にタックスヘイブン対策税制の対象外(資産性所得は除く)となっていました。

改正後は「税負担割合」を見るのではなく、まず実体を見ます。
つまり「特定外国関係会社」であるかどうかの判定をします。


■特定外国関係会社に対する課税

下記が「特定外国関係会社」の一例です。
・実体基準、管理支配基準のいずれも満たしていないようなペーパーカンパニー
・租税情報交換に関する国際的な取り組みに関して著しく非協力的な国地域に本店等を置く外国関係会社(現在はトリニダード・トバゴのみ)

特定外国関係会社に該当し、かつ租税負担割合が30%未満である場合に、会社単位のタックスヘイブン対策税制適用となります。
以前は税率ありき、でしたがこれからはまず実体ありき、になったイメージですね。

特定外国関係会社に該当しない場合もまだ気が抜けません。


■対象外国関係会社とは

「特定外国関係会社」に該当しないこととなっても、次に「対象外国関係会社」というカテゴリーがありますので注意してください。

「対象外国関係会社」は
・事業基準
・実体基準(OR管理支配基準)
・関連者基準(OR所在地国基準)
をどれか一つでも満たさない会社を指します。
ちなみに上記基準を「経済活動基準」と言います。


■対象外国関係会社に対する課税

対象外国関係会社に該当し、かつ税負担割合が20%未満であれば会社単位のタックスヘイブン対策税制適用となります。

ちなみに「対象外国関係会社」にも該当しない場合でも、税負担割合が20%未満であれば「受動的所得」については、やはりタックスヘイブン対策税制適用となるので注意が必要です。


最後に簡単におさらいです。
最大のポイントは20%トリガー税率という大きな境目が無くなったことです。
「税金が低い国に進出していないから大丈夫」が通用しなくなります。
例えば米国であっても、日本から見てタックスヘイブン対策税制が適用される可能性が出てきます

今一度、自社の海外子会社を洗い出し、潜在リスクが無いか確認してみることをお勧めいたします。


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高田和俊

2017年12月18日 (月)

【税制改正】2018年税制改正大綱② 大企業の新所得拡大税制

大企業向けの新所得拡大税制

前回のブログで中小企業の新所得拡大税制についてご説明しました。
今回は2018年税制改正大綱に掲載されている資本金が1億円を超えるような大企業(非中小企業者)における新しい所得拡大税制を見てみたいと思います。

まず、現行の所得拡大税制は平成30年3月31日までに開始する事業年度で終了となります。3月決算法人であれば平成30年3月期までですね(中小企業者と同じです)。

平成30年4月1日~平成33年3月31日開始事業年度から新しい所得拡大税制がスタートする予定です。


適用要件
国内雇用者に対する給与で役員を除くのは以前から変わりません。
その他の要件は下記二つとなります。

(1)(平均給与等支給額-比較平均給与等支給額)÷平均給与等支給額≧3%
「平均給与等」については中小企業者の税制と同様で、現行制度とは内容が異なる点に注意が必要です。
前期から今期にまたがって給与支給があればよいのではなく、前期から今期にかけて全支給期において給与支給がある方の給与等が対象となります。

(2)国内設備投資額≧減価償却費の総額の90%
「国内設備投資」は当期取得の国内減価償却資産で期末保有分の取得価額合計額となります。また減価償却費には「準備金方式の特別償却」も含まれる点に注意が必要です。
結構ハードルが高いと言えるのではないでしょうか?



税額控除額

給与等支給増加額の15%税額控除可能です。
更に、教育訓練費額の比較教育訓練費額に対する増加割合が20%以上なら税額控除割合が15%→20%に増えます
※比較教育訓練費:前期、前々期の平均額となり平均給与と対象期間が異なります。



まとめ

現行制度と大きく違うのは設備投資が要件に加わった点です。
その結果得られる税額控除額は拡大されていますので、計画的な設備投資等を実施することで所得拡大税制のメリットを受けられるよう検討すべきだと思います。



あすか税理士法人

高田和俊


2017年12月15日 (金)

【税制改正】2018年税制改正大綱① 中小企業者の新所得拡大税制

2018年度税制改正大綱 中小企業の所得拡大税制

2017年12月14日、自民党から2018年税制改正大綱が発表されました。
その内容を詳しく見て行こうと思いますが、まず第一弾として中小企業の所得拡大税制を見たいと思います。

現行の所得拡大税制は平成30年3月31日まで開始事業年度(3月決算法人なら平成30年3月期)で終わりを迎えます。
2018年度税制改正大綱によると、現行の所得拡大税制は改組されて残ることとなります。

具体的な内容は?

✔ 平成30年4月1日~平成33年3月31日開始事業年度に

✔ 国内雇用者に対して給与を支給した場合において

{「平均給与等支給額」-「比較平均給与等支給額」}÷「比較平均給与等支給額」≧1.5%

ならば給与等支給増加額×15%の税額控除が可能(法人税の20%上限)となります。

ここでの「平均給与等支給額」は現行のものと異なる点に注意が必要です。
今までは前期と当期にまたがって給与支給がある方が対象でしたが、新税制では前期と当期の全期間給与支給がある方が対象となります。

更なる減税もあります!

15%税額控除の率は下記要件を満たすと20%にUPします。
(1)上記1.5%判定の数値が2.5%以上
(2)下記いずれかを満たす
 教育訓練費が前期比10%UP
 事業年度終了までに経営力向上計画認可を受け、かつその計画に従って経営力向上が確実に行われたと証明されたもの

20%税額控除が出来る要件にある『計画に従って経営力向上が確実に行われたと証明された』という部分がすごく気になりますね。

今後、より詳細な情報が出てきたらまた情報提供いたします。

次回は大企業(非中小企業者)所得拡大税制についてお話します。



あすか税理士法人

高田和俊

2017年12月 1日 (金)

【国際税務】海外子会社に対する貸付金利息の注意点

海外貸付金について一番注意するべきこと

海外子会社を有する企業グループの税務リスクを語る上で「寄附金」は最重要課題の一つです。寄附金と認定されると損金不算入&社外流出となるので是が非でも避けたいところです。

では、海外子会社に対する貸付金がある場合に、寄附金認定を受けないために何を注意すべきか分かりますでしょうか?

一番注意すべきはその「貸付利率」です。

貸付利率について“適正”な利率で利息を徴収してないと、適正額と実額との差額について寄附金認定を受けてしまいます。

では「適正」な海外子会社貸付金利息とは何を言うのでしょうか?

海外貸付金の“適正”な利率とは?

適正利率=自社の調達金利、と思われた方は注意が必要です。

国内子会社に対する貸付であればその考え方でも良いのですが、対海外子会社となると話が変わります。

海外子会社に外貨建で貸付を実行する場合、その為替変動リスクは誰が負うのでしょうか?日本親会社となるのが一般的ですよね。そうすると日本円での調達利率をベースに貸付利率を計算すべきでないことをご理解いただけると思います。

では何の利率を使えばよいのか?

国税がこの問題に関する情報「移転価格事務運営要領」を公開していることをご存じでしょうか?

 

「移転価格事務運営要領」による適正利率

「移転価格事務運営要領」は法律ではありませんが課税庁が税務調査を実施する上で指針としている文書になりますので納税者としては無視しがたい文書となります。

その書類によると下記三つの手法に基づき貸付利率が算定されているかを課税庁がチェックすることとなっています。

下記は1,~3,までその数字の順番がそのまま優先順位となっています。

 

1,借手が金融機関から同条件(通貨、期間等。以下同じ)で借りるときの利率 

2,貸手が金融機関から同条件で借りるときの利率

3,通貨、取引時期、期間等が同様の状況の下で国債等により運用するとした場合に得られるであろう利率

一般的に円建てでの国内調達金利より高い率になりやすいです。

つまり国内調達金利で貸付を実行すると寄附金認定リスクが高いこととなります。

公開されている情報で明示されていますので、海外子会社に対する利率を検討する際は充分に考慮すべきだと思います。

課税当局による税務調査への対応

貸付利息は毎期継続的に収益計上されるのが一般的であるため、課税当局も税務調査で重点的にチェックする事項の一つとなります。

逆をいえば、正しい知識さえ持っていれば対処が難しい問題ではないため、あとは証拠書類をきちっと整えておけば、税務調査時に課税当局に与える印象は非常によくなると言えると思います。

知らなかった場合に与える影響が大きい「海外子会社に対する寄附金」。

貸付利率を考える際に「寄附金の問題がある!」と認識して頂けたらな幸いです。

 

あすか税理士法人

高田和俊


2017年11月24日 (金)

【国際税務】アメリカ市民権者が日本に住み勤務すると居住者?非居住者?

日系企業の外国人採用が進んでいる情報を目にすることが多くなってきましたが、中小企業においてもそれは例外ではないかと思います。

外国人を日本で採用し働いて貰う場合、日本の税金をどのように取り扱うのか、経理・総務の部署の方を悩ませる問題の一つではないでしょうか。

今日は、その一つの例として「米国市民権(citizen)を有する人」が日本に複数年滞在予定で来日、給与を得ている場合の税金取扱いを見ていきたいと思います。

そもそも米国では
「米国市民(citizen)」と「外国人(alien)」に区分され、
その「外国人」を更に「米国居住者(resident alien)」と「米国非居住者(non-resident alien)」に区分しています。

このうち「米国市民(citizen)」は全世界所得課税とされておりますので、日本でいう『居住者』に所得税の性格上は似ています。

今回のケースでアメリカにも日本にも住居を有している場合、どちらの居住者になるのでしょうか?

《日本》

複数年、日本で勤務する予定で来日した場合、日本の「居住者」となります。

《米国》

市民権を有することにより米国において課税を受けるべきものは、米国の「居住者」となります。


つまり『双方居住者』となるわけで、このままでは両方の国で全世界所得課税となり本人の負担が非常に大きくなってしまいます。


そこで「日米租税条約」が力を発揮することになります。
日米租税条約第4条第2項では米国市民権者は「日本の居住者に該当する者でない」ことを満たす場合に限り米国居住者とする、となっております。

つまり日本居住者に該当するならば、米国市民権者は日本で居住者課税を受けることとなるわけです。

外国人を日本で雇用する場合の取扱いは、各国の租税条約は最低限でも確認する必要があると言えます。


あすか税理士法人

高田和俊

2017年11月10日 (金)

【国際税務】海外勤務者の税金①~海外出向後、1年未満で帰国したとき~

海外に子会社や支店を設立すると、現地に日本人スタッフを送るケースが多いと思います。
現地と日本とでは企業文化が違いますし国民性も違うので、日本人スタッフが現地にいる重要性は非常に高いと思います。

日本から1年以上の期間の予定で海外に出向してもらう場合、原則として出国日の翌日~帰国日まで日本非居住者となり、日本で稼ぐ所得(国内源泉所得)以外は基本的に日本で課税されなくなります。

「1年以上の期間の予定」であることを証明する書類としては出向辞令が一般的だと思います。税務調査時にいらぬ疑いをかけられないようにするために、きっちりとした証憑を保存しておくようにしてください。

では、1年以上の予定で出国した人が本社の辞令により急遽帰国することになった場合どうなるでしょうか?実務的にはよく発生し、経理担当の方を悩ませると思います。

悩む選択肢としては

(A)当初の出向辞令の終わりの期間まで非居住者
(B)帰国日まで居住者
(C)帰国の辞令が出た日まで非居住者
(D)遡って出国当初からすべて居住者

が考えられると思います。


どれが正解だと思いますか?


所得税法基本通達によると「国外において職業に従事するため国外に居住することとなった者は、その地における在留期間が契約等によりあらかじめ1年未満であることが明らかであると認められる場合を除き、国外に住所を有する者と推定される」と考えられています(通達を抜粋、一部読みやすいように解釈・編集しています)。

この通達によると、出国時点において1年以上の期間、海外で勤務することを約されている場合、少なくとも出国時点において非居住者であることは間違いありません。また結果として1年未満になった場合の特例を定めた通達等は存在しません。

よって(D)は選択肢として無くなります。

次に課税の公平性を考えた時に、(A)は帰国の実態とそぐわず、また(B)であれば会社がの恣意性により帰国を伸ばすことも出来るため、これもまた不適当と言えます。


結論として(C)の帰国辞令が出た日までが非居住者扱いとなり、その翌日から居住者として日本で課税(全世界所得課税)されることとなります。


ちなみに年の途中で非居住者→居住者となったとき、年末時点で居住者であればその年のすべての所得について全世界所得課税(居住者課税)が必要なのかなと悩むところですが、これも所得を稼得したときの居住・非居住区分に応じて課税されますのでご安心くださいませ。


あすか税理士法人

高田和俊

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