2018年1月22日 (月)

【国際税務】タックスヘイブン対策税制の改正(2018年4月1日より)

2018年税制改正大綱が公開され、内容が気になるところだと思います。

ですが、1年前の改正内容を覚えておられますでしょうか?

国際税務の分野では2017年の税制改正で「タックスヘイブン税制」について大きな改正が入っています。

いわゆるトリガー税率(20%)が廃止されましたよね。
あの改正が実効を持つのが、外国関係会社の2018年4月1日以後開始事業年度からとなります。
つまり間もなく、です。

今日は、この4月以降から実効となる新タックスヘイブン税制(2017年度税制改正)について少しおさらいしてみましょう。

このおさらいをするにあたり、2017年12月21日付の租税特別措置法通達改正の内容は非常に重要ですので下記URLを参照してください。実務的には是非押さえておきたい内容となっております。
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/hojin/kaisei/171221/index.htm


■トリガー税率の廃止

改正前はトリガー税率(税負担割合)が20%以上であれば、実質的なペーパーカンパニーであってもタックスヘイブン対策税制の対象外となり、日本で合算して申告する必要がありませんでした。
また20%未満でも「適用除外基準」を全て満たしていれば基本的にタックスヘイブン対策税制の対象外(資産性所得は除く)となっていました。

改正後は「税負担割合」を見るのではなく、まず実体を見ます。
つまり「特定外国関係会社」であるかどうかの判定をします。


■特定外国関係会社に対する課税

下記が「特定外国関係会社」の一例です。
・実体基準、管理支配基準のいずれも満たしていないようなペーパーカンパニー
・租税情報交換に関する国際的な取り組みに関して著しく非協力的な国地域に本店等を置く外国関係会社(現在はトリニダード・トバゴのみ)

特定外国関係会社に該当し、かつ租税負担割合が30%未満である場合に、会社単位のタックスヘイブン対策税制適用となります。
以前は税率ありき、でしたがこれからはまず実体ありき、になったイメージですね。

特定外国関係会社に該当しない場合もまだ気が抜けません。


■対象外国関係会社とは

「特定外国関係会社」に該当しないこととなっても、次に「対象外国関係会社」というカテゴリーがありますので注意してください。

「対象外国関係会社」は
・事業基準
・実体基準(OR管理支配基準)
・関連者基準(OR所在地国基準)
をどれか一つでも満たさない会社を指します。
ちなみに上記基準を「経済活動基準」と言います。


■対象外国関係会社に対する課税

対象外国関係会社に該当し、かつ税負担割合が20%未満であれば会社単位のタックスヘイブン対策税制適用となります。

ちなみに「対象外国関係会社」にも該当しない場合でも、税負担割合が20%未満であれば「受動的所得」については、やはりタックスヘイブン対策税制適用となるので注意が必要です。


最後に簡単におさらいです。
最大のポイントは20%トリガー税率という大きな境目が無くなったことです。
「税金が低い国に進出していないから大丈夫」が通用しなくなります。
例えば米国であっても、日本から見てタックスヘイブン対策税制が適用される可能性が出てきます

今一度、自社の海外子会社を洗い出し、潜在リスクが無いか確認してみることをお勧めいたします。


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高田和俊

2017年12月18日 (月)

【税制改正】2018年税制改正大綱② 大企業の新所得拡大税制

大企業向けの新所得拡大税制

前回のブログで中小企業の新所得拡大税制についてご説明しました。
今回は2018年税制改正大綱に掲載されている資本金が1億円を超えるような大企業(非中小企業者)における新しい所得拡大税制を見てみたいと思います。

まず、現行の所得拡大税制は平成30年3月31日までに開始する事業年度で終了となります。3月決算法人であれば平成30年3月期までですね(中小企業者と同じです)。

平成30年4月1日~平成33年3月31日開始事業年度から新しい所得拡大税制がスタートする予定です。


適用要件
国内雇用者に対する給与で役員を除くのは以前から変わりません。
その他の要件は下記二つとなります。

(1)(平均給与等支給額-比較平均給与等支給額)÷平均給与等支給額≧3%
「平均給与等」については中小企業者の税制と同様で、現行制度とは内容が異なる点に注意が必要です。
前期から今期にまたがって給与支給があればよいのではなく、前期から今期にかけて全支給期において給与支給がある方の給与等が対象となります。

(2)国内設備投資額≧減価償却費の総額の90%
「国内設備投資」は当期取得の国内減価償却資産で期末保有分の取得価額合計額となります。また減価償却費には「準備金方式の特別償却」も含まれる点に注意が必要です。
結構ハードルが高いと言えるのではないでしょうか?



税額控除額

給与等支給増加額の15%税額控除可能です。
更に、教育訓練費額の比較教育訓練費額に対する増加割合が20%以上なら税額控除割合が15%→20%に増えます
※比較教育訓練費:前期、前々期の平均額となり平均給与と対象期間が異なります。



まとめ

現行制度と大きく違うのは設備投資が要件に加わった点です。
その結果得られる税額控除額は拡大されていますので、計画的な設備投資等を実施することで所得拡大税制のメリットを受けられるよう検討すべきだと思います。



あすか税理士法人

高田和俊


2017年12月15日 (金)

【税制改正】2018年税制改正大綱① 中小企業者の新所得拡大税制

2018年度税制改正大綱 中小企業の所得拡大税制

2017年12月14日、自民党から2018年税制改正大綱が発表されました。
その内容を詳しく見て行こうと思いますが、まず第一弾として中小企業の所得拡大税制を見たいと思います。

現行の所得拡大税制は平成30年3月31日まで開始事業年度(3月決算法人なら平成30年3月期)で終わりを迎えます。
2018年度税制改正大綱によると、現行の所得拡大税制は改組されて残ることとなります。

具体的な内容は?

✔ 平成30年4月1日~平成33年3月31日開始事業年度に

✔ 国内雇用者に対して給与を支給した場合において

{「平均給与等支給額」-「比較平均給与等支給額」}÷「比較平均給与等支給額」≧1.5%

ならば給与等支給増加額×15%の税額控除が可能(法人税の20%上限)となります。

ここでの「平均給与等支給額」は現行のものと異なる点に注意が必要です。
今までは前期と当期にまたがって給与支給がある方が対象でしたが、新税制では前期と当期の全期間給与支給がある方が対象となります。

更なる減税もあります!

15%税額控除の率は下記要件を満たすと20%にUPします。
(1)上記1.5%判定の数値が2.5%以上
(2)下記いずれかを満たす
 教育訓練費が前期比10%UP
 事業年度終了までに経営力向上計画認可を受け、かつその計画に従って経営力向上が確実に行われたと証明されたもの

20%税額控除が出来る要件にある『計画に従って経営力向上が確実に行われたと証明された』という部分がすごく気になりますね。

今後、より詳細な情報が出てきたらまた情報提供いたします。

次回は大企業(非中小企業者)所得拡大税制についてお話します。



あすか税理士法人

高田和俊

2017年12月 1日 (金)

【国際税務】海外子会社に対する貸付金利息の注意点

海外貸付金について一番注意するべきこと

海外子会社を有する企業グループの税務リスクを語る上で「寄附金」は最重要課題の一つです。寄附金と認定されると損金不算入&社外流出となるので是が非でも避けたいところです。

では、海外子会社に対する貸付金がある場合に、寄附金認定を受けないために何を注意すべきか分かりますでしょうか?

一番注意すべきはその「貸付利率」です。

貸付利率について“適正”な利率で利息を徴収してないと、適正額と実額との差額について寄附金認定を受けてしまいます。

では「適正」な海外子会社貸付金利息とは何を言うのでしょうか?

海外貸付金の“適正”な利率とは?

適正利率=自社の調達金利、と思われた方は注意が必要です。

国内子会社に対する貸付であればその考え方でも良いのですが、対海外子会社となると話が変わります。

海外子会社に外貨建で貸付を実行する場合、その為替変動リスクは誰が負うのでしょうか?日本親会社となるのが一般的ですよね。そうすると日本円での調達利率をベースに貸付利率を計算すべきでないことをご理解いただけると思います。

では何の利率を使えばよいのか?

国税がこの問題に関する情報「移転価格事務運営要領」を公開していることをご存じでしょうか?

 

「移転価格事務運営要領」による適正利率

「移転価格事務運営要領」は法律ではありませんが課税庁が税務調査を実施する上で指針としている文書になりますので納税者としては無視しがたい文書となります。

その書類によると下記三つの手法に基づき貸付利率が算定されているかを課税庁がチェックすることとなっています。

下記は1,~3,までその数字の順番がそのまま優先順位となっています。

 

1,借手が金融機関から同条件(通貨、期間等。以下同じ)で借りるときの利率 

2,貸手が金融機関から同条件で借りるときの利率

3,通貨、取引時期、期間等が同様の状況の下で国債等により運用するとした場合に得られるであろう利率

一般的に円建てでの国内調達金利より高い率になりやすいです。

つまり国内調達金利で貸付を実行すると寄附金認定リスクが高いこととなります。

公開されている情報で明示されていますので、海外子会社に対する利率を検討する際は充分に考慮すべきだと思います。

課税当局による税務調査への対応

貸付利息は毎期継続的に収益計上されるのが一般的であるため、課税当局も税務調査で重点的にチェックする事項の一つとなります。

逆をいえば、正しい知識さえ持っていれば対処が難しい問題ではないため、あとは証拠書類をきちっと整えておけば、税務調査時に課税当局に与える印象は非常によくなると言えると思います。

知らなかった場合に与える影響が大きい「海外子会社に対する寄附金」。

貸付利率を考える際に「寄附金の問題がある!」と認識して頂けたらな幸いです。

 

あすか税理士法人

高田和俊


2017年11月24日 (金)

【国際税務】アメリカ市民権者が日本に住み勤務すると居住者?非居住者?

日系企業の外国人採用が進んでいる情報を目にすることが多くなってきましたが、中小企業においてもそれは例外ではないかと思います。

外国人を日本で採用し働いて貰う場合、日本の税金をどのように取り扱うのか、経理・総務の部署の方を悩ませる問題の一つではないでしょうか。

今日は、その一つの例として「米国市民権(citizen)を有する人」が日本に複数年滞在予定で来日、給与を得ている場合の税金取扱いを見ていきたいと思います。

そもそも米国では
「米国市民(citizen)」と「外国人(alien)」に区分され、
その「外国人」を更に「米国居住者(resident alien)」と「米国非居住者(non-resident alien)」に区分しています。

このうち「米国市民(citizen)」は全世界所得課税とされておりますので、日本でいう『居住者』に所得税の性格上は似ています。

今回のケースでアメリカにも日本にも住居を有している場合、どちらの居住者になるのでしょうか?

《日本》

複数年、日本で勤務する予定で来日した場合、日本の「居住者」となります。

《米国》

市民権を有することにより米国において課税を受けるべきものは、米国の「居住者」となります。


つまり『双方居住者』となるわけで、このままでは両方の国で全世界所得課税となり本人の負担が非常に大きくなってしまいます。


そこで「日米租税条約」が力を発揮することになります。
日米租税条約第4条第2項では米国市民権者は「日本の居住者に該当する者でない」ことを満たす場合に限り米国居住者とする、となっております。

つまり日本居住者に該当するならば、米国市民権者は日本で居住者課税を受けることとなるわけです。

外国人を日本で雇用する場合の取扱いは、各国の租税条約は最低限でも確認する必要があると言えます。


あすか税理士法人

高田和俊

2017年11月10日 (金)

【国際税務】海外勤務者の税金①~海外出向後、1年未満で帰国したとき~

海外に子会社や支店を設立すると、現地に日本人スタッフを送るケースが多いと思います。
現地と日本とでは企業文化が違いますし国民性も違うので、日本人スタッフが現地にいる重要性は非常に高いと思います。

日本から1年以上の期間の予定で海外に出向してもらう場合、原則として出国日の翌日~帰国日まで日本非居住者となり、日本で稼ぐ所得(国内源泉所得)以外は基本的に日本で課税されなくなります。

「1年以上の期間の予定」であることを証明する書類としては出向辞令が一般的だと思います。税務調査時にいらぬ疑いをかけられないようにするために、きっちりとした証憑を保存しておくようにしてください。

では、1年以上の予定で出国した人が本社の辞令により急遽帰国することになった場合どうなるでしょうか?実務的にはよく発生し、経理担当の方を悩ませると思います。

悩む選択肢としては

(A)当初の出向辞令の終わりの期間まで非居住者
(B)帰国日まで居住者
(C)帰国の辞令が出た日まで非居住者
(D)遡って出国当初からすべて居住者

が考えられると思います。


どれが正解だと思いますか?


所得税法基本通達によると「国外において職業に従事するため国外に居住することとなった者は、その地における在留期間が契約等によりあらかじめ1年未満であることが明らかであると認められる場合を除き、国外に住所を有する者と推定される」と考えられています(通達を抜粋、一部読みやすいように解釈・編集しています)。

この通達によると、出国時点において1年以上の期間、海外で勤務することを約されている場合、少なくとも出国時点において非居住者であることは間違いありません。また結果として1年未満になった場合の特例を定めた通達等は存在しません。

よって(D)は選択肢として無くなります。

次に課税の公平性を考えた時に、(A)は帰国の実態とそぐわず、また(B)であれば会社がの恣意性により帰国を伸ばすことも出来るため、これもまた不適当と言えます。


結論として(C)の帰国辞令が出た日までが非居住者扱いとなり、その翌日から居住者として日本で課税(全世界所得課税)されることとなります。


ちなみに年の途中で非居住者→居住者となったとき、年末時点で居住者であればその年のすべての所得について全世界所得課税(居住者課税)が必要なのかなと悩むところですが、これも所得を稼得したときの居住・非居住区分に応じて課税されますのでご安心くださいませ。


あすか税理士法人

高田和俊

2017年11月 6日 (月)

【国際税務】企業活動の根幹を担う大規模倉庫は課税対象に

2017年11月2日の日本経済新聞に「外資ネット通販も課税」という記事が載っていました。

簡単に言うと、日本でビジネスをしている外国企業に対する課税を広げることとなります。


租税条約のベースとなるOECDモデルは『恒久的施設なければ課税無し』という考え方をとっています。

「何でもかんでも課税する!」と各国が好き放題に主張すると企業活動に支障が出て、ひいては世界的な経済活動の発展に悪影響が出るため『恒久的施設』という概念を作り、課税のベースにしているわけです。


この『恒久的施設(Permanent Establishment:PE)』はOECDモデルの租税条約第5条に規定されていますが、その第4項に恒久的施設にあてはまらないもの(つまり例外)が列挙されています。

そこに「商品の保管、展示又は引渡しのためのにのみ施設を使用すること」や「商品の在庫を保管、展示又は引渡しのためにのみ保有すること」を行う場合が挙がっているのです。


これがために、例えばネット通販のような事業については、倉庫のみがある国で課税が出来ない状態になっていました。


しかし、2017年6月に日本も署名した「OECD(経済協力開発機構)の多国間協定」(2018年通常国会にて協定承認見込み)により、今後は「企業活動の根幹を担うような大規模倉庫があれば課税される(日経新聞)」ように税制改正を行うことになりそうです。このことは2017年11月1日に政府税制調査会がその改正の方針を確認したことから明らかになっています。

2017年10月25日現在で「OECDの多国間協定」に署名している国・地域は71にのぼります。

詳細はこちらをご覧下さい。

「beps-mli-signatories-and-parties-1.pdf」をダウンロード


見ていただいて気になる点があると思います。そうです、「米国」がありません。

米国はこの多国間協定にサインしない理由の一つとして、米国が各国と結んでいる租税条約が既にあることを挙げています。それは米国が各国と結んだ租税条約のまま行く方が米国にとって都合が良い面が多いことの証明ではないかと思います。


国際間の取り決めは、足並みを揃えることで望む効果が得られると私は思います。


PEに関する改正は企業の租税コストに直結し、海外戦略に影響を及ぼすことだと思います。


正確に、かつ適時に情報を精査し企業方針を定めていくことがこれから益々重要になると感じました。



あすか税理士法人

高田和俊

2017年10月27日 (金)

【国際税務】デンソーがタックスヘイブン対策税制に関する訴訟で逆転勝訴(最高裁)

平成29年10月24日、最高裁にて一つの判決が出ました。

大手自動車部品メーカー「DENSO」がタックスヘイブン対策税制について名古屋国税局から指摘を受けた件で、地裁は納税者の主張を認め、高裁は一転して国の主張を認めていましたが、最高裁にて再度納税者の主張が認められる結果となりました。
DENSOのHPで公開された情報はこちら


DENSOはシンガポール子会社についてタックスヘイブン対策税制における「適用除外要件」を満たすものとして申告したことについて、国側が「適用除外要件」を満たさないと主張したことに端を発します。

具体的な争点を見る前に、まずは簡単に「タックスヘイブン対策税制」と、その「適用除外要件」について簡単に整理したいと思います。


「タックスヘイブン対策税制」とは、軽課税国に子会社等を保有する場合、その子会社の存在意義が「全世界的な節税目的」である場合はこれを良しとせず、子会社で得た利益をあたかも日本で得た利益であるかのように日本で課税する制度を指します。

しかし、全ての軽課税国子会社を同等に取り扱ってしまうと、全世界的な節税目的ではない経済的合理性がある子会社保有まで阻害してしまうことになるため「適用除外要件」を満たせばタックスヘイブン対策税制の適用を受けない(つまり、軽課税国で稼いだ利益に対して日本では課税しない)こととしています。


本件の争点は当該シンガポール子会社の主たる事業が「株式保有業務」だったのか「地域統括業務」だったのか、です
前者であれば「適用除外要件」を満たさない
ため、シンガポールで得た所得は日本親会社所得とみなして日本法人税が課税され、後者でかつ他の要件を満たせば「適用除外要件」を満たすため、シンガポールで得た所得はシンガポールで課税されて終わりとなります。


国側は「地域統括業務が株式保有事業に含まれる」と主張(高裁が支持)してきましたが、最高裁では「DENSOシンガポール子会社の地域統括業務は調達や財務、物流改善など多岐にわたる。域内グループ会社の効率化やコスト低減を目的としており、相当の規模と実体を有していた」(日本経済新聞)と指摘し適用除外要件を満たすためタックスヘイブン対策税制の適用除外とされました。


全世界的な節税目的ではなく、きちんとした経済的合理性のある目的をもって、かつ相当の規模と実体を有していたため、タックスヘイブン対策税制の適用は不適当と判断したこととなります。



全ての資料を確認できているわけではありませんが、私が把握した情報だけで考えると、この形で適用除外要件を満たさないと判断されるのは非常に酷だと思いました。

その意味で、今回の最高裁判決は非常に意義深く、また今後の国際税務調査において大きな影響があるのは間違いないと思います。


ただ、情報のつまみ食いをしてはいけない、と言う点に注意していただきたいと思います。

例えば今回は地域統括業務に関する一定の見解が示されたとは思いますが、逆に「地域統括業務を行っていれば大丈夫」と判断しないことが重要です。


色々な背景があって今回は最高裁が納税者の主張を理解したと考えるべきだと思います。
国内税務もそうですが、ピンポイントではなく流れを俯瞰的に見ながら総合的に判断することが重要だと改めて思いました。


あすか税理士法人

高田和俊

2017年10月13日 (金)

【国際税務】トヨタ自動車で使用料(ロイヤリティ)源泉支払漏れ~使用地主義と債務者主義~

本日(平成29年10月13日)の新聞記事によると、トヨタ自動車が名古屋国税局の税務調査を受け、世界ラリー選手権のラリーカー開発等に関連して、外国子会社へ支払った使用料(ロイヤリティ)等を巡って源泉徴収漏れが指摘されたようです。
2015年から2年間で、不納付加算税を含めて3億円追徴と報じられているのでインパクトは大きいですね。

以下、トヨタ自動車は詳細のコメントを控えていますので、筆者の推測が入る点ご了承下さいませ。


トヨタ自動車のHPによると、同社はドイツにモータースポーツ車両開発の欧州拠点となる子会社があるようです。恐らく、この子会社に対してロイヤリティを支払う際に、所得税納付(源泉徴収)漏れが生じたものと思われます。



そもそも日本の国内法(所得税法)では、国内業務に係るロイヤリティ支払を国内源泉所得と定める『使用地主義』を採用しています。
日本で開発を行っていれば国内源泉扱いで源泉徴収が必要、国外で開発を行っていれば国外源泉扱いで源泉徴収が不要となりますね。


一方、旧日独租税条約(平成28年12月以前)によると、ロイヤリティの使用地にかかわらず、ロイヤリティの支払者(債務者)の居住地国を源泉地とする『債務者主義』を採用しています。


これらのように国内法と租税条約で異なる取扱いが定められている場合、納税者有利を選択できる『プリザベーションクローズ』という考え方があります。

しかし一方で、国内法(所得税法第162条)では、源泉地国に関する考え方については国内法より租税条約を優先する旨の規定があるため、結局租税条約が適用されることとなり、『債務者主義』により源泉徴収の有無を考えることとなります。


つまり今回のケースでは日本に源泉徴収権があることとなります。


日本で直接役務提供を受けていなくても、日本で源泉徴収し、日本国に納税する必要があることは直感的に違和感がありますよね。
だから注意が必要です。


ちなみに、平成29年1月1日以降に支払うロイヤリティについては新日独租税条約の適用を受け、ロイヤリティに関する源泉税は免税となっております。
この適用を受けるには一定の手続が必要ですのでご注意下さい。


今回のトヨタ自動車のケースは2015年から2年間について税務否認を受けたようですので、旧日独租税条約に基づき10%の源泉徴収+不納付加算税(罰金)が課税されたものと推測されます。


国際取引に関する税務は非常に複雑です。
国際税務に明るい会計事務所にご相談されることをお勧めいたします。



あすか税理士法人
高田和俊

2017年8月29日 (火)

【国際税務】国外転出時課税時に株式を担保提供する場合の取扱い~特定の証券会社だけ?~

2017年7月に国外転出時課税制度が導入されて2年が経過しました。

出国から5年(延長すれば10年)以内に帰国する等すれば課税が免除されますが、帰国までの間は「猶予制度」を利用する必要があります。

この猶予を受けるためには「担保提供」が必要です。

 

今回はこの「担保提供」に上場株式を利用した時に発生した問題点をお伝えしたいと思います。

 

ここからの話しは東京国税局管内のお話です。その他の国税局管内につきましては異なる取扱いとなる可能性がございますのでご注意下さい。

 

東京国税局管内では、従前「みずほ証券」様に口座を持っていないと担保提供が出来ませんでした。

国外出国前から口座を保有する納税義務者の方は良いですが、そうで無い方はどうでしょうか?国外出国後に口座を開くのは大変です。

そもそも国が特定の証券会社のみを指定している事実に違和感を感じました

 

この状況の改善を目的として東京国税局管内の税務署長宛に「要望書」を提出いたしました。

提出当初はリアクションがありませんでしたが4ヶ月ほどたったある日、税務署から『みずほ証券様以外にも「SMBC日興證券」様と「野村證券」様も担保提供口座として利用可能になった』旨の通知を頂きました。

 

今回のケースは要望書が功を奏したのかどうかは定かではありませんが、税務署より取扱い変更の通知を頂いたことから、一定の効果があったものだと思います。

 

あるべき形に是正され良かったと思う気持ち半分、対応に時間がかかってしまったなと残念な気持ち半分です。

 

課税上弊害があると思われることはキチンと伝えれば対応されることが改めて分かりましたので、私たち税理士は積極的に税務当局に伝えるべきだと改めて感じました。

 

あすか税理士法人   

高田和俊




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