« 2017年8月 | トップページ | 2017年11月 »

2017年10月

2017年10月27日 (金)

【国際税務】デンソーがタックスヘイブン対策税制に関する訴訟で逆転勝訴(最高裁)

平成29年10月24日、最高裁にて一つの判決が出ました。

大手自動車部品メーカー「DENSO」がタックスヘイブン対策税制について名古屋国税局から指摘を受けた件で、地裁は納税者の主張を認め、高裁は一転して国の主張を認めていましたが、最高裁にて再度納税者の主張が認められる結果となりました。
DENSOのHPで公開された情報はこちら


DENSOはシンガポール子会社についてタックスヘイブン対策税制における「適用除外要件」を満たすものとして申告したことについて、国側が「適用除外要件」を満たさないと主張したことに端を発します。

具体的な争点を見る前に、まずは簡単に「タックスヘイブン対策税制」と、その「適用除外要件」について簡単に整理したいと思います。


「タックスヘイブン対策税制」とは、軽課税国に子会社等を保有する場合、その子会社の存在意義が「全世界的な節税目的」である場合はこれを良しとせず、子会社で得た利益をあたかも日本で得た利益であるかのように日本で課税する制度を指します。

しかし、全ての軽課税国子会社を同等に取り扱ってしまうと、全世界的な節税目的ではない経済的合理性がある子会社保有まで阻害してしまうことになるため「適用除外要件」を満たせばタックスヘイブン対策税制の適用を受けない(つまり、軽課税国で稼いだ利益に対して日本では課税しない)こととしています。


本件の争点は当該シンガポール子会社の主たる事業が「株式保有業務」だったのか「地域統括業務」だったのか、です
前者であれば「適用除外要件」を満たさない
ため、シンガポールで得た所得は日本親会社所得とみなして日本法人税が課税され、後者でかつ他の要件を満たせば「適用除外要件」を満たすため、シンガポールで得た所得はシンガポールで課税されて終わりとなります。


国側は「地域統括業務が株式保有事業に含まれる」と主張(高裁が支持)してきましたが、最高裁では「DENSOシンガポール子会社の地域統括業務は調達や財務、物流改善など多岐にわたる。域内グループ会社の効率化やコスト低減を目的としており、相当の規模と実体を有していた」(日本経済新聞)と指摘し適用除外要件を満たすためタックスヘイブン対策税制の適用除外とされました。


全世界的な節税目的ではなく、きちんとした経済的合理性のある目的をもって、かつ相当の規模と実体を有していたため、タックスヘイブン対策税制の適用は不適当と判断したこととなります。



全ての資料を確認できているわけではありませんが、私が把握した情報だけで考えると、この形で適用除外要件を満たさないと判断されるのは非常に酷だと思いました。

その意味で、今回の最高裁判決は非常に意義深く、また今後の国際税務調査において大きな影響があるのは間違いないと思います。


ただ、情報のつまみ食いをしてはいけない、と言う点に注意していただきたいと思います。

例えば今回は地域統括業務に関する一定の見解が示されたとは思いますが、逆に「地域統括業務を行っていれば大丈夫」と判断しないことが重要です。


色々な背景があって今回は最高裁が納税者の主張を理解したと考えるべきだと思います。
国内税務もそうですが、ピンポイントではなく流れを俯瞰的に見ながら総合的に判断することが重要だと改めて思いました。


あすか税理士法人

高田和俊

2017年10月13日 (金)

【国際税務】トヨタ自動車で使用料(ロイヤリティ)源泉支払漏れ~使用地主義と債務者主義~

本日(平成29年10月13日)の新聞記事によると、トヨタ自動車が名古屋国税局の税務調査を受け、世界ラリー選手権のラリーカー開発等に関連して、外国子会社へ支払った使用料(ロイヤリティ)等を巡って源泉徴収漏れが指摘されたようです。
2015年から2年間で、不納付加算税を含めて3億円追徴と報じられているのでインパクトは大きいですね。

以下、トヨタ自動車は詳細のコメントを控えていますので、筆者の推測が入る点ご了承下さいませ。


トヨタ自動車のHPによると、同社はドイツにモータースポーツ車両開発の欧州拠点となる子会社があるようです。恐らく、この子会社に対してロイヤリティを支払う際に、所得税納付(源泉徴収)漏れが生じたものと思われます。



そもそも日本の国内法(所得税法)では、国内業務に係るロイヤリティ支払を国内源泉所得と定める『使用地主義』を採用しています。
日本で開発を行っていれば国内源泉扱いで源泉徴収が必要、国外で開発を行っていれば国外源泉扱いで源泉徴収が不要となりますね。


一方、旧日独租税条約(平成28年12月以前)によると、ロイヤリティの使用地にかかわらず、ロイヤリティの支払者(債務者)の居住地国を源泉地とする『債務者主義』を採用しています。


これらのように国内法と租税条約で異なる取扱いが定められている場合、納税者有利を選択できる『プリザベーションクローズ』という考え方があります。

しかし一方で、国内法(所得税法第162条)では、源泉地国に関する考え方については国内法より租税条約を優先する旨の規定があるため、結局租税条約が適用されることとなり、『債務者主義』により源泉徴収の有無を考えることとなります。


つまり今回のケースでは日本に源泉徴収権があることとなります。


日本で直接役務提供を受けていなくても、日本で源泉徴収し、日本国に納税する必要があることは直感的に違和感がありますよね。
だから注意が必要です。


ちなみに、平成29年1月1日以降に支払うロイヤリティについては新日独租税条約の適用を受け、ロイヤリティに関する源泉税は免税となっております。
この適用を受けるには一定の手続が必要ですのでご注意下さい。


今回のトヨタ自動車のケースは2015年から2年間について税務否認を受けたようですので、旧日独租税条約に基づき10%の源泉徴収+不納付加算税(罰金)が課税されたものと推測されます。


国際取引に関する税務は非常に複雑です。
国際税務に明るい会計事務所にご相談されることをお勧めいたします。



あすか税理士法人
高田和俊

« 2017年8月 | トップページ | 2017年11月 »

フォト
2017年11月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30